海みたいな空だ 晴れあがった寒い空だ 何かが呻いている 晴れあがった寒い空だ それは誰しものようだ 平淡にゆるやかではある 焦げて俯いてさえ 平淡にゆるやかではある 炎えたつ紅葉の山脈が 今しも絶対であったのか 母達の吐息のはかなさが 孤独な男の腕力が 赤子も父も母も 空に唇をあてて 黒いうたをひとつずつ 吹きあげては忘れ去るのだ 人がある国がある のんきに錆びつくものがある 群れて許される顔に 目玉を投げつけてやる そうだ友よ 愛しきものらは あんなにヒョイと無防備に立っている 傷つき汚れてさえ あんなにヒョイと無防備に立っている