「ツネさん、いいお日がらで」 「ええ、今日は仏滅ですからねマサオさん」 「マサオさんってオレのことでしたっけ」 「忘れちゃいやですよタケオさん」 「そうでしたねハルコさん」 切れ切れの言葉 絶え絶えの記憶 縫い閉じるように聞こえてくるのは バスのクラクション 「ブンキチさん、懐かしいですね」 「ええ、明日のことですからねフミコさん」 「フミコってわたしのことでしたっけ」 「忘れちゃいやですよチヨコさん」 「そうでしたねヨシオさん」 廊下のベンチは バスの停留所 ベッドを這い出しやってくるのは 老人たち 「キミさん、バスが来ましたよ」 「ええ、バスが来ましたねケンジさん」 「ケンジってオレのことでしたっけ」 「忘れちゃいやですよヤスオさん」 「そうですねトシコさん」 切れ切れの思い出 絶え絶えの意識 縫い閉じるように聞こえてくるのは バスのクラクション バスに乘って帰りたい