疲れた体を 引きずりながら、 ようやく部屋に辿り着くと 最後の力を 振りしぼるみたいに、 ストーブに火をつけた 説ぎ捨てた 洋服を足で 押しのけながら、 ねころがあると 彼はようやく自分だけのスペースを 見つけたみたいに、 疲労の中で そっと目をとじて、 ほっと一息、 ため息をついた 俺は、まだだめになりやしないさ 自分らしく生きようとする分だけ、 回りのことが わからなくなっているような 気がしていた、 わからない分だけ、 自分に自信がなくなっていた 部屋が少しずつ 暖まってくると、 いつもの部屋の時間が、 彼の体に戻ってきた、 部屋のポスターは、 いつものポーズで 彼を見ていた 1枚に2ヶ月分、 印刷してあるカレンダーは、 まだめくる必要のない分だけ 距離を感じさせたし、 今日一日が、 まるでちっぽけだというように、 カレンダーには日にちが、 有りあまっているように見えた 机の上に、 投げ出したままの、 途中まで読んで 読むのを止めた 本のことを考えると、 なんだか、 この部屋にいることすら 違うような 退屈にも似た、 苛つきが、 彼をおおっていた 彼は床にへばりついた自分の姿を、 思い浮かべてみた、 ひどく惨めな虫みたいだと思った、 彼は車のキーを引き出しから取り出すと、 誰もいない部屋の空間をじっと睨みつけ、 しかたねぇなって呟いて、 部屋のドアを開けた 冷え切った風が、 彼の体のすみずみに吹きつけ、 すり抜けていくと、 彼はこの街に たった一人、 取り残されているような 気分になった 寒空に一つ、 同じように取り残された、 白く光る街灯が、 彼には、やさしかった 負けないでって囁く、 彼女みたいだった