[00:14.28]疲れた体を [00:18.11]引きずりながら、 [00:23.49]ようやく部屋に辿り着くと [00:30.49]最後の力を [00:34.25]振りしぼるみたいに、 [00:39.80]ストーブに火をつけた [00:47.48]説ぎ捨てた [00:50.19]洋服を足で [00:57.31]押しのけながら、 [01:00.05]ねころがあると [01:05.54]彼はようやく自分だけのスペースを [01:15.73]見つけたみたいに、 [01:21.82]疲労の中で [01:27.22]そっと目をとじて、 [01:33.24]ほっと一息、 [01:36.33]ため息をついた [01:42.79]俺は、まだだめになりやしないさ [01:53.04]自分らしく生きようとする分だけ、 [01:59.28]回りのことが [02:02.60]わからなくなっているような [02:06.26]気がしていた、 [02:10.88]わからない分だけ、 [02:16.19]自分に自信がなくなっていた [02:25.59]部屋が少しずつ [02:32.64]暖まってくると、 [02:38.90]いつもの部屋の時間が、 [02:44.46]彼の体に戻ってきた、 [02:53.36]部屋のポスターは、 [02:57.43]いつものポーズで [03:01.01]彼を見ていた [03:07.69]1枚に2ヶ月分、 [03:11.91]印刷してあるカレンダーは、 [03:18.00]まだめくる必要のない分だけ [03:25.34]距離を感じさせたし、 [03:32.28]今日一日が、 [03:37.00]まるでちっぽけだというように、 [03:45.12]カレンダーには日にちが、 [03:51.19]有りあまっているように見えた [04:00.34]机の上に、 [04:03.43]投げ出したままの、 [04:09.58]途中まで読んで [04:13.10]読むのを止めた [04:16.92]本のことを考えると、 [04:23.53]なんだか、 [04:28.03]この部屋にいることすら [04:32.84]違うような [04:39.38]退屈にも似た、 [04:42.36]苛つきが、 [04:47.06]彼をおおっていた [04:53.17]彼は床にへばりついた自分の姿を、 [05:04.34]思い浮かべてみた、 [05:12.08]ひどく惨めな虫みたいだと思った、 [05:27.61]彼は車のキーを引き出しから取り出すと、 [05:40.61]誰もいない部屋の空間をじっと睨みつけ、 [05:49.37]しかたねぇなって呟いて、 [05:56.66]部屋のドアを開けた [06:06.15]冷え切った風が、 [06:09.94]彼の体のすみずみに吹きつけ、 [06:18.62]すり抜けていくと、 [06:25.51]彼はこの街に [06:32.72]たった一人、 [06:36.32]取り残されているような [06:39.28]気分になった [06:46.94]寒空に一つ、 [06:54.29]同じように取り残された、 [06:59.63]白く光る街灯が、 [07:06.76]彼には、やさしかった [07:13.87]負けないでって囁く、 [07:21.64]彼女みたいだった [07:23.67]