夕べ 月も凍るほど冷たい夜 酔い潰れていた 妙に浮かれると 誰彼となく肩を抱きあいながら "俺の話を聞いてくれるかい"っと頬を並べ 舐めあいながら 少なくともこんなふうに集う夜には しゃべりしぎたり おどけすぎたりしながら 後味の悪さを感じる目覚めが来るまで 酔いが俺のために安らかに奏でてくれる事を信じようと思う そして片寄せ合うひとりぼっちの様々な価値観を ロマンチストの言葉を借りて あまりにもちっぽけに あまりに滑稽に それでも何ひとつ失望することなく 星の流れにも似た一定の方向へ 吸い殻の山の向こうの笑顔とアルコールを抱きしめて 何よりも孤独であると 何よりも人が一番滑稽であると 白い壁を赤く濡らす 安っぽい色に染まってしまおう テーブルに並べられたグラスも もうどれが自分のグラスだったのか判らないほど酔っていた 彼は時々誰かを捕まえてたくさんの御託を並べ合うと 興奮したそいつの鼻が震えているのを見ていた けれど床に落としたぼやけた自分の影が ゆらゆらゆれているのが その空間と溶け合っているのを見ると 自分の認識するものがすべて正しいという訳じゃないんだなと なんだかおかしくて 自分の事だけで手いっぱいだという無力さに気づき あたりを見回すと ウェイターは そんなものだろうと無口にウィスキーを注いだ 曲が流れた 大きな音で足元に向かってこういった "この曲は俺のためにあるんだ 俺とおまえと"