荊姫になりたいの? 棘の指輪を編んで その皮膚に巻いてあげる 泣いて泣いて花を染めてよ 糸巻きに眠る前に 言葉遊びしましょう その指に教えるから 野薔薇 荊 バラバラになる 「欲しがるの?」「いらないの?」 「ほほえむの?」「泣きたいの?」 「触れたいの?」「こわれるの?」 「会いたいの?」「逃げたいの?」 ーーそう? 一番大切に愛してあげる 花かんむりを乗せてあげる 水やりは必要ないでしょう だってあなたが泣くもの 足を切っても怒らないで 魔女のお城に眠るよりは わたしのそばで咲いていてよ 縋る言葉で優しくさせてよ 荊姫も夢見るの? いつか目覚めるのなら 赤い花びらをあげる なにもかもを忘れるように 綺麗なものが欲しいの あなたの笑う声もね 妖精に願わないで わたしだけに希うのよ 止まる呼吸包んで口づけるの 白い指先握ってみるの ほどく胸元頬を寄せて 心臓に歯を立てるの 夜毎遊戯は秘密の種 蒔いて芽吹いたちいさな糧 あなたの孕むわたしの悪 深く深くへそうっと落ちてくの 「欲しがって」「受けとって」 「ほほえんで」「泣きだして」 「触れたいの」「こわしたい」 「会いにきて」「逃げ出して」 ーーねえ お願い裏切ってよ二律背反 一番愛したいだけよ と思いながら傷つけるの 途絶えるまで咲かせたいの 右手で丸い頬を撫でて 左手で息を止めたいの 予定調和なんていらない あなたといたいだけよ 一番大切に愛してあげる 荊姫になりたいなら 棘の指輪と眠りの庭 糸車に指を刺すの 孤独の城にふたりきり あなたの脚をつなぎとめて あなたの涙そうっと舐めて 深く深くへそうっと閉ざすの