「此処は何処なのかしら」 私は確か…追われ 矢を射られ…倒れたはずだったわ 「気付いて良かった」 大丈夫かい 私の名はアルヴァレス 君達の村を襲った軍隊の指揮官 だったのだが…今ではもう追われる身だ からと言っても…言い訳に過ぎぬ 私が憎いかい 「えぇ」 憎くない と言ったら噓になるけれど 助けてくれた貴方のこと 私は信じたい 私はベルガ人(ベルジュ)なのだよ 亡國の仇を取る為 舊フランドルへ身を寄せた<異邦人>(アルベルジュ この意味が解るかい お嬢さん この手はもう取り返しのつかない程に汚れている 「最初は怒りからプロイツェンを」 次に異國での居場所を確保する為ロンバルドを そして己の願望を満たすという目的の為に カスティリヤを滅ぼした 「今でも目を閉じると」 鮮やかに浮かんでくる風景がある 私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ そんな私に當時のキルデベルト六世陛下は約束してくれた 「國をあと一つ」 例えばプリタニアの征服を條件に ベルガの獨立自治権を許すと 私は他人(ひと)の國を売って 自分の國を買い戻そうとしたのだ 「私はそんな愚かな男なのだよ」 「そう…そんな愚かな男なら」 私がここで殺してしまっても構わないわね 「あぁ…好きにするが良い」 私は取り返しのつかない過ちを犯してしまった 「馬鹿!それでは何も解決しないじゃない」 貴方はそれで満足かも知れない でも貴方の仇を取ろうとする者が現れないとは限らない その論理が繰り返し悲劇を生んでいるのよ 「取り返しのつく歴史なんて一つもないの」 だから尊いの だから私達は新しい歴史を創ってゆくの 愚か者とは 過ちを犯す者のことじゃない 過ちと知ってなお 正そうしない者のことをいうのよ 「…ねぇ…そうでしょう」 「お嬢さん…君は強いな」 「えぇ…そうよ…私は強いわ」 この國の未來を背負っているんだもの 「この國の未來」 プリタニアの女王は若い娘だと聞いていたが まさか…君が 「ローザギネアヴァロン…」 そう…私がこの國(プリタニア)の女王よ 黙っていて御免なさい…でも解って欲しいの アルヴァレス將軍…私は貴方を信じます 「これは…女王陛下とは露知らず」 數々の非禮を 「お願い!畏まらないで」 私はそういうの好きじゃないの 私のことはローザで良いわ 「それにしても貴方があの有名な「ベルガの死神」(アルベルジュ)とはね …想像していた像(イメージ)と隨分違うわね 熊のような大男だと思っていたのに 「…でも<ベルガの死神>(アルベルジュ)はやめた方が良いわね」 この國では流行らないわ プリタニア風に言うと そうね、<ベルガの暴れん坊>(アーベルジュ)かしら そっちの方がずっと素敵よ ねぇ…そうしなさいな 「何?さっきから女性(ひと)の顔をそんなに見つめて」 「いや…最初に貴女(あなた)を助けた時」 ある女性に似ていると思ったのだが 「思ったのだが」 「…今にして思うと全然似ておらぬ」 「なに」 ウインダミアの湖畔を白い風が駈け抜けて往く トリストラム騎士団長率いる第六騎士団が衛る地 ランカスターへと… END