軈て移らふ愛は 此の掌に何を残せませふ 傍らにて微睡む 甘ゐ睦言は燗の温み 引潮の攫う刻に擦り抜けませふか 残り香だけ あゝ沁み入るやうに泡沫と消ゆ罪作り 御銭、女、恋…凡てに 汚くもふしだらな あなた ぬらりくらり 揺蕩へど 寄せては返し 「浮きつ沈みつ」 軈て移らふ愛も 此の掌を絡み梳けるでせふ 波打つ髪、艶無く 何れ飽ゐて終ふ哀に 番ゐの小鳥は嘸や仕合せでせふか 空を仰ぎ あゝ鴛鴦願ふ飛翔び立てぬ恋ノ淵 乞ふて焦がれし袖時雨 現つにならぬと知りぬれど 波紋 眩暈 弧を描けば 藻掻く蒼へ 「息モ為ラズニ」 紅涙拭ふ あゝ其ノ指さへも戯れなのでせふか 御銭、女、恋…凡てに汚くもふしだらな あなた ぬらりくらり 揺蕩へど 寄せては返す 漣 乞ふて焦がれし袖時雨 現つにならぬと知りぬれど 波紋 眩暈 弧を描けば 藻掻く蒼へ比翼と成りて 「手と手を縛め蒼へ」