虹の轮 「夏への四つのプレリユウド」から あたたかい香りがみちて 空から 花を播き散らす少女の天使の掌が 云のやうにやはらかに 覗いてゐた おまへは仆に凭れかかりうつとりとそれを眺めてゐた 夜が来ても 小鸟がうたひ 朝が来れば 丛 に露の雫が光つて见えた――真珠や 滑らかな小石の刃金の丛に ふたりは やさしい树木のやうに腕をからませ をののいてゐた 吹きすぎる风の ほほゑみに 抚でて行く 朝のしめつたその风の……さうして 一日が明けて行つた 暮れて行つた おまへの瞳は仆の瞳をうつし そのなかに もつと远くの深い空や昼でも见える星のちらつきが こころよく こよない调べを奏でくりかへしてゐた