[ti:] [ar:] [al:] [offset:0] [00:02.33]小さな墓の上に [00:07.66]失ふといふことが [00:09.44]はじめて人にその意味をほんとうに知らせたなら。 [00:16.56]その顷、仆には死と朝とが [00:19.98]いちばんかがやかしかつた。 [00:23.37]そのどれも赝の姿をしか见せなかつたから。 [00:28.90]朝は饱いた水蒸気の色のかげに、 [00:33.39]死は饰られた花たちの柩のなかに、 [00:37.85]しづまりかへつて [00:39.63]めいめいの时间を生きてゐたから。 [00:46.01]すなほな物语をとざしたきり、 [00:49.31]たつたひとりの読む人もなく。 [00:52.91]骨に暦を雕りつけて。 [00:56.71]なくなつた明るい歌と、 [00:59.64]その上にはてないばかりの空と。ことづけ。 [01:09.50]墓の上にはかういふ言叶があつた―― [01:15.81]たのしかつた日曜日をさがしに行つた [01:20.73]木枯しと粉雪と僧院に捕へられた [01:26.48]それきりもう帰らなかつた。 [01:31.19]一生黙つて生きてゐた人、ここに眠る。