[00:20.91]嗚呼、手を繋いで花火を横に持った。 [00:23.87] 繋いだ、握り込んだ、右の左手は湿った。 [00:27.50] 八月の夜みたいに。 [00:34.08] 手持ち花火みたいに。 [00:39.49] 行方知らずの打ち上げ花火が [00:44.29]私みたいだ、と笑った。 [00:48.60] 夜を舞った花びら、一つ。 [00:52.29] 今日を待った言葉を一つ。 [00:56.72] 花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。 [01:02.12]せめて一言、伝わるように。 [01:21.28] 「じゃあ」手を放した。夏の匂いが去った。 [01:24.64] 二人は帰路に就いた。逆側の駅を目指した。 [01:27.96] 今、その袖を掴んで逃げ出してしまおうか。 [01:40.02] 反対方向、走り出す。あなたの背を追う。 [01:44.75] 不意に柳が映った。 [01:48.93] 夜を舞った花びら、一つ。 [01:53.60] 今日を待った言葉を一つ。 [01:58.52] 「どうせなら一緒に居よう。朝まで一緒に居よう。」 [02:03.37] 祭りが終わっていく。 [02:07.31] 私たちは逃げていく。花火から、この夜から。 [02:13.15]この、歯がゆい関係から。 [02:16.40] 背後で最後が鳴った。明くる空と音で分かった。 [02:20.21] 今は、振り向かないように。 [02:23.53] 指を絡めて、逃げた。 [02:28.63] 夜を舞った花びら、一つ。 [02:32.74] 今日を待った言葉を一つ。 [02:37.30] 花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。 [02:42.60]せめて一言。 [02:44.91] 行く宛てのない夜を走る。 [02:49.15] 掴まらないようにと走る。 [02:54.14] 何も意味がなくても、あまりに儚くても。 [02:59.45]それは私の生きる糧になった。 [03:24.04]「真水 / Mamizu」より, 2017年12月29日リリース