「ここは謁見の間?」 「神様なんてどこにもいねじゃ」 礼拝の日、教えられた情報に相違なく 王の住まう城の警備が驚くほどに手薄だった 見張りの目を縫うように二人は城へと足を踏み入れる 辿り着いた最奥の部屋 重い扉の先 広がるものは 響く一定の電子音 ただ薄暗い無機質な空間 見渡す先に神の姿は無く 求める者も見当たらない けれどここに何かが隠されている そんな確信が脳裏を支配した 暴くな これ以上は触れてはならぬ神域だ 本能が拒絶している その先に待つ何かを 今すぐ逃げ出したくなる 身体の震えが止まない それでも後には引けない 真相を掴むまでは Quo vadis,domine? Verum est quod pro salute fit mendacium. Deo duce,non errabis. 「行けないな、誰の許可を取ってここに足を踏み入れたんだい?」 「ひぇ!」 「なんで……ここに?!」 「今日が何の日が分からない?」 「週に一度の礼拝こそがここに生きる者の義務だとそう言ったよね」 暗い部屋に差し込む光 不意に聞こえた声 振り向いた先 変わらぬ優しい表情で 静かに王は二人へ問いかける 断りもなくこの部屋へ立ち入り 一体何を企むのか 何より神聖なこの地脅かす その行いこそ忌むべき涜神だ Quo vadis,domine? 傅け 目前のお方こそ此処を護る者 民を幸福へと導く 尊き救世主 崇高な神を穢した 計り知れぬ罪の重さ 追放を恐れるならば 免罪を懇願せよ 「神様、これが?」 ノアの崇めるものそれはただ数字の羅列を吐き出すだけの巨大の物体 時折聞こえる異音は人の発するものとはほど遠く 「何が神様だよ!こんなのただの機械じゃねか?まさか、本当にこんなもんが神だと思ってのかいよ、ノア!」 「ノア? ノア様……だろう?この素晴らしさを理解できないとは君たちの洗礼すらも受けていないのか?」 「967番、1000番、これは神への冒涜と見ていいね」 「あ、違う!違います!私たちはただ友人を、モモを探していて」 「モモ?ああ~100番のことか?彼女ならほら、そこにいるじゃないか」 「誰よりも美しい心の持ち主、神にこそ相応しいはずだ」 指差された暗闇 愛しき姿を求めて 目を凝らした先に映るのは 液体に浮かぶ人造物 未だ不完全な神の"依代" 猟奇的なそれは吐き気を催すほどに 「あ……ああ……そんな」 「なんだよ、これ?」 「モモ……モモ……! 嫌……嫌―――――ッ!!」 歪んだ 王の神への信仰 その成れの果てが 彼女であるはずがないと ただ虚ろに繰り返す 虚妄だ あんなモノの為ここまで来たわけじゃない 失望と 憤慨 憎悪 全て叫喚となる 心のどこかで知らず感じた微々たる優越 寵愛受けし者に待つ 幸福溢れる未来 全てが脆く砕かれて 広がる現実に伏せる 神に意志など無いのだと 全ては無作為の中—… 「これまでに犯した幾つもの罪、その重さを決めるのは僕ではない」 「君たちの行いが楽園追放に値するか否か、さぁ、神様に聞いてみようよ」 それは神の意志とは名ばかりの段々セレクト、時には人の生死すらも