1、ほどかれて 少女の髪に むすばれし 葬儀の花の 花ことばかな 2、とんびの子 なけよ下北 かねたたき 姥捨以前の 母眼らしむ 3、かくれんぼ 鬼のまゝにて 老いたれば 誰をさがしに くる村祭 4、亡き母の 真赤な櫛を 埋めにゆく 恐山には 風吹くばかり 5、降りながら みづから亡ぶ 雪のなか 祖父(おおちち)の瞠し 神をわが見ず 6、濁流に 捨て来し燃ゆる 蔓珠沙華 あかきを何の 生贄とせむ 7、見るために 両瞼をふかく 裂かむとす 剃刀の刃に 地平をうつし 8、新しき 仏壇買ひに 行きしまま 行方不明の おとうと鳥 9、吸いさしの 煙草で北を 指すときの 北暗ければ 望郷ならず 朗読:寺山修司