[00:15.70]ある女,まなこ裏がへりて,外のこと見えずなりたり。 [00:32.40]瞠らむとすればするほどおのが内のみ見え, [00:40.26]胃や腸もあらはなる内臓の暗闇, [00:47.81]あほう鳥の啼くこえのみきこゆ。 [01:03.35]女,くるしめども癒えず, [01:11.08]剃刀もて眼球をえぐりだし, [01:18.89]もとのように表がへさむとすれど,眼球に表なし。 [01:27.08]耐えがたきまま表なしの眼球を畑に埋めたり。 [02:21.30]女,四十にして盲目のままはてしが,畑には花咲かず。 [02:32.65]ただ,隣人たちのみ,女を世間知らずとして遇せしと伝ふ。 [02:44.32]鶏頭の首なしの茎流したる川こそ渡れわが地獄変。