人知れぬまま朽ちてゆく 御伽噺のなかで 歪み始めた捻子の毒に 惑わされウサギは踊る 幾ら追いかけ走っても 僕には届かぬ日々 その運命(さだめ)が終わるのを 嗚呼 待ち侘びていた 愛するアリス――その手を取ろう 連れてくよ何処まででも 皮肉な闇に 微笑みひとつ 拒絶なんて気づかぬ振りをして 寒々しさに満ちる路地 消え行く日の残骸 樅の老木、模造の星 夢の運び屋の抜け殻 新たなものに押し遣られ 打ち棄てられた時計 いのち止まるその際に 嗚呼 ウサギは哭いた 微睡むアリス――教えてあげる 甘い破滅に塗れて 浮かんだ月が なにかを嘲笑い 物知り猫の瞳を閉じてく 僕はここだよ、悲しまないで 永久の国まであと少し 愛するアリス――その手をどうか 崩れそうなこの僕に重ねて 人知れぬまま朽ちてゆく 御伽噺のなかで 雪に埋もれて冷たくなる 発条の祈りも 沈む――