[00:07.34]摘めと言ふから [00:10.24]ばらをつんでわたしたら、 [00:13.76]無心でそれをめちやめちやに [00:17.40]もぎくだいてゐるのです [00:21.30] [00:21.52]それで、おこつたら [00:24.47]おどろいた目を見ひらいて、 [00:28.01]そのこなごなの花びらを [00:31.35]そつと私の手にのせた [00:34.96] [00:35.18]綾にしき何をか惜しむ [00:38.87]惜しめただ君若き日を [00:42.24]いざや折れ花よかりせば [00:45.76]ためらわば折りて花なし [00:49.81] [00:50.03]それはそれは [00:52.47]ひとひらの花びらに書かれた [00:56.06]あの緑の夏の思ひ出だけど [01:00.04]恋ふるねがひはあだにして、それは [01:04.01] [01:04.23]いまはいまは [01:06.72]ただ疑ひに枯れゆくばかり [01:10.22]しぐれよ、つげておくれ [01:13.82]あの人にわたしは今夜もねむらないでゐたと [01:23.97] [01:24.19]しぐれよ あの人に… [01:50.19] [01:50.41]とめてとまらぬ [01:53.40]わが眼や水は流れけり [01:56.60]君を葬りしその水は [02:00.62]手折ればくるし、花ちりぬ [02:04.61] [02:04.83]消なば消ぬべき [02:07.52]夏の夜の夢さめざるに [02:11.04]この不実なる砂原に [02:14.45]ますます深く迷うばかり [02:19.84] [02:19.84] [02:20.06]月出でしほの江に浮び [02:23.56]光ながれて花にほひ [02:27.14]枝をたわめて薔薇(さうび)をつめば [02:30.69]うれしき人が息の香ぞする [02:34.67] [02:34.89]それはそれは [02:37.40]ひとひらの花びらに書かれた [02:40.97]あの緑の夏の思ひ出だけど [02:44.70] [02:44.92]若き命は束の間に散りて [02:49.20]いまはいまは [02:51.53]君は いま世にあらざるか [02:54.97] [02:55.19]しぐれよ、つげておくれ [02:58.76]あの人にわたしは今夜もねむらないでゐたと [03:08.97] [03:09.19]しぐれよ [03:12.46]あの人に… [03:19.62] [03:19.84]しぐれよ [03:26.63]あの人に…