[00:10.004] 摘めと言ふから [00:13.242] ばらをつんでわたしたら、 [00:15.388] 無心でそれをめちやめちやに [00:19.347] もぎくだいてゐるのです [00:23.941] それで、おこつたら [00:26.669] おどろいた目を見ひらいて、 [00:30.704] そのこなごなの花びらを [00:34.454] そつと私の手にのせた [00:38.082] 綾にしき何をか惜しむ [00:41.201] 惜しめただ君若き日を [00:45.239] いざや折れ花よかりせば [00:49.145] ためらわば折りて花なし [00:53.154] それはそれは [00:56.297] ひとひらの花びらに書かれた [00:59.533] あの緑の夏の思ひ出だけど [01:03.103] 恋ふるねがひはあだにして、それは [01:08.081] いまはいまは [01:10.561] ただ疑ひに枯れゆくばかり [01:14.466] しぐれよ、つげておくれ [01:17.640] あの人にわたしは今夜もねむらないでゐたと [01:28.428] しぐれよ あの人に… [01:55.313] とめてとまらぬ [01:58.361] わが眼や水は流れけり [02:01.392] 君を葬りしその水は [02:05.534] 手折ればくるし、花ちりぬ [02:09.325] 消なば消ぬべき [02:13.571] 夏の夜の夢さめざるに [02:16.428] この不実なる砂原に [02:20.396] ますます深く迷うばかり [02:23.618] 月出でしほの江に浮び [02:27.371] 光ながれて花にほひ [02:31.390] 枝をたわめて薔薇(さうび)をつめば [02:35.491] うれしき人が息の香ぞする [02:39.088] それはそれは [02:41.453] ひとひらの花びらに書かれた [02:45.301] あの緑の夏の思ひ出だけど [02:50.804] 若き命は束の間に散りて [02:53.666] いまはいまは [02:56.207] 君は いま世にあらざるか [02:59.525] しぐれよ、つげておくれ [03:03.479] あの人にわたしは今夜もねむらないでゐたと [03:14.477] しぐれよ [03:17.645] あの人に… [03:24.930] しぐれよ [03:32.092] あの人に…