夏空の向こうから 舞い落ちてくる粉雪 地面と雲の間のどこか 違う季節の時間軸 見慣れない向日葵 何故か吹かない北風 揺れる 陽炎 蜃気楼 半年後の空を映して 聴きなれない蝉の声 照らし続ける陽の光 汗かき 木漏れ日 ひとやすみ 汗だく 貴方がそこにいた ひとひら ほろり 夏の雪が 季節外れの街に降る 溶けることには逆らえない あるはずのない不正な実在 ひらひら ぱらり 夏の雪が 貴方のもとへと舞い降りて 温もりだけ ぎゅっと 抱えて溶けた 西の方 入道雲 夕焼け空を隠して 走る稲妻 響く雷鳴 展望台への助走距離 少し濁った星空 吐息に色の無い季節 線香花火に照らされて 短く光って消えていく ひとひら ぽろり 夏の雪が 貴方の頬を伝い落ちる 理由も知らず零れる雫が 混凝土に染み込んでいく ひとつぶ ぽつり 夏の雪が 地面の下 眠りに就く 凍えそうな季節を待って 静かな静かな冬支度 ひとひら ほろり 夏の雪が 時空を超えて冬の街へ 懐かしくて馴染む景色に 貴方の姿が加わって ひらひら ぱらり 夏の雪が 貴方のもとへと舞い降りて 貰った温もり抱えて 凍える身体を暖めた 何気なく触った 白い粒は あの日見た夏の雪